mameブログ

mameという男がやりたい事をやっている記録

21/05/29 今日買ったCD

サブスクしてますけど

AppleMusic入ってるわけですが、入ってないアルバムもあったりします。
また、以前までCD屋巡りが大好きだったので、性分からCD探しはやめられない。
コロナ禍という事もあり、本当に行く機会が減ったのですが、時々はCDを買います。
今日買ったCDを記事にします。

Frank Zappa [ Thing Fish ]

フランク・ザッパ大好きです。
これは2枚組アルバム、和訳付きのものを探していました。
というのも活劇調なので、セリフ口調がとても多く、英語をとても聞き取れない。
ザッパは音楽だけでなく歌詞や言葉遊びも独特です。
汚い風貌、汚い言葉を使っているようでいて、なんだか小気味よい。

Stanly Turrentine [ Salt Song ]

小さい頃に通っていた図書館で借りたことがあるジャズ盤。
今回発見できたので、購入。
ジャズなのだけど、とてもR&B色が強くて聞きやすい。
1曲目、Gibraltarが最高にクール。

Stan Getz [ Pure Getz ]

まだ購入してから聞けていませんが、スタン・ゲッツは好きです。
白人テナー奏者で、とても理知的なプレイが楽しみ。

特撮 [ 爆誕 ]

筋肉少女帯大槻ケンヂの別バンドです。
特撮は筋肉少女帯よりもいささかヘヴィ。
この人は歌詞が妙に刺さるし、その歌詞を放つ声がまた不思議な説得力に満ちています。

以上!

好きなプレイリスト①サンプリング:スライ&ザ・ファミリー・ストーン

Apple Musicに入っています。
洋楽の充実度が気に入って使っています。
アルバム紹介系の本を買う事が多くて、そういう本に載っていた興味深い作品とかを検索して聞いたりしてます。


最近はプレイリストで聞くのに凝ってます。
今はこのプレイリストがお気に入り。


music.apple.com


スライ&ザ・ファミリーストーンの楽曲を使ったサンプリング曲のリストです。
有名な曲から初めて聞いた曲まで、とりわけ多くサンプリングされてそうな曲は「If You Want Me To Stay」ですね、私も大好きな曲。
このリストの中でも「ミシェル・ンデゲオチェロ」という女性アーティストにハマってしまいました。


ミシェル・ンデゲオチェロの紹介はまた別記事で。

知らない曲探し

■おすすめの名盤

誰かさんの好きなアルバムを知る事が好きです。
特に自分の好きなアルバムもその人のリストに含まれていたりするとテンションが上がりますね。
今日見たのはこのページ。


galaxypimptaste.hatenadiary.com


紹介のナンバーを色々聞いてみようと思います。

MILES DAVIS - KIND OF BLUE

■唯一無二の大名盤

Miles Davisの「The Complete Columbia Album Collection」を持っています。
BOXセットで、なんと…53枚組です。
Miles Davisのコロンビア時代のアルバムをほぼほぼ網羅したもので、有名な「Kind Of Blue」「My Funny Valentine」「Nefertiti」「Bitches Brew」「On The Corner」「You're Under Arrest」も入っています。
「Birth Of The Cool」や「Cookin'」、「TuTu」は入ってません。
というか、ジャズに疎い自分ですら、こんなにも作品名を知っているのか、と驚愕としました、多すぎるよ代表作…。


で、このBoxの1作目から順にMiles Davis作品を聞いていっていました。
今回、ようやく「Kind Of Blue」にたどり着きました。
1959年の作品、全5曲。

KIND OF BLUE

KIND OF BLUE

  • アーティスト:DAVIS, MILES
  • 発売日: 2009/02/06
  • メディア: CD


順に聞くと、より強調される本作品の圧倒的完成度
名盤だからという前提でなるべく聴かないようにしたつもりですが、あまりにも到達し過ぎている完璧な作品です。


再生した時の、ビルエヴァンスのピアノイントロから空気感が異なる。
そのままSo Whatの有名なリフに入ります。
前述したように、私はジャズに疎いです、加えて音楽理論に疎い。
その耳で聞くので技巧面での凄さを感じる事は難しいはずなのですが、So Whatからは、1つ1つのフレーズがこれ以外ないという配置をしているように思えてくるのです。
熱い訳でも無い、冷めてる訳でも無い、色々な方が述べているように「アートである」と表現するしかない音響空間と楽器演奏なのです。
これはもう聴くしかない、もしも音が絵のように額に飾られて美術館に置かれるなら、という想像をしてしまいます。


ジャズ畑の人に怒られそうですが、自分はジャズにある種退屈と感じる時があります。
プレイヤーが楽しいと思って演奏している物に共感できなかったり、まとまりを感じられない事があります。
ジャズはアルバムで聴くと特にそう思う事があり、曲の構成に納得がいかなかったり、カバーするスタンダード曲に必然性を全く感じなかったりする訳です。
しかし、「Kind Of Blue」、これはあっという間にアルバムが終えてしまいます。
先に述べた1曲目のSo Whatから、5曲目のFlamenco Sketchesまで。
ロックやファンクが一番好きだけどこのアルバムに匹敵したアートと呼ばれる作品は果たしてあるのか…。
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中山康樹著「新マイルスを聴け」を持っています。
その中で「Kind Of Blue」についてこう述べています。


これこそ、20世紀のジャズが到達しえた最高峰なのだ。ジャズを無人島に持っていくなら、この1枚だけでいい。
これこそ、モダン・ジャズのエッセンスであり、究極の名演奏集である。
~~~
しかしジャズとは、情けない音楽である。
100年にも及ぶ歴史のなかで、これ1枚しか生み出せなかったのだ。
「カインド・オブ・ブルー」に匹敵する作品は、ジャズのどこを切っても、出てこない。
ジャズよ、何をやっていたのだ。
もしマイルスが「カインド・オブ・ブルー」を残していなかったら、どうしていたのだ。
ホントにもう、何から何まで、マイルスにおんぶに抱っこなのである。
これがなければ、ジャズの素晴らしさを世界に、後世に伝える作品は、無に等しいものになっていたのだ。
「カインド・オブ・ブルー」、このたった1枚のために、ジャズは未来永劫、胸を張って生きていけるのである。

新・マイルスを聴け!!

新・マイルスを聴け!!


かなり強い文章です。
著者は大衆音楽全般に詳しく、ジャズはそれこそマイルス以外も山ほど聴いたはずです。
ジャズプレイヤーで言えばこのアルバムに参加した方を除いても高名な人は多くいるのですが、それでも上記の文章を書かざるを得ないのが本作です。
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もし万が一、45分程度のお手すき時間があるならば、そしてその時間を最も有意義に過ごしたいというのであれば、この作品を掛けて、その前にただ座って浸るというのも一案です。
誰かにとって無人島に持っていくモノとはそれ程価値のあるものなのです。
買いです。


ちなみに、Boxセットを順に聴く中で、「Kind Of Blue」の他に優れていると(主観的に)感じた作品は「Porgy And Bess」です、これも1959年作品、充実期ですね。

STEVIE WONDER - INNERVISIONS

■最高傑作

スティーヴィー・ワンダーの最高傑作を紹介します。
1973年発表の「インナーヴィジョンズ」です。


インナーヴィジョンズ

インナーヴィジョンズ


私は音楽を聴くのが好きで色々な洋楽CDを聞いてきました。
よくある話題で無人島にCD5枚持っていけるとしたら」ってありますが、私の思う5枚の内の1枚に入ります
それほど高い完成度を誇るアルバムです。
収録曲9曲、全てにおいて無駄が無いです。

恐ろしい事に、スティーヴィー・ワンダーはこれ程の作品を残しておきながら、この作品に比肩する評価を受けている作品が少なくとも3作品残しています。
時系列順で紹介すると、
1972年の「トーキング・ブック」
1973年の「インナーヴィジョンズ」
1974年の「ファースト・フィナーレ」
1976年の2枚組「キー・オブ・ライフ」
人によってスティーヴィー・ワンダーの最高傑作は変わります。
私の中でも、この作品と「ファースト・フィナーレ」は揺らぐ部分があります。
5年の間に歴史に残る作品を4作品残したわけです。
しかも作曲や作詞、編曲などのコントロールを全て握り、質の高い作品を生みました。

■何が凄いのか?

私の感想メインのスティーヴィー・ワンダーの凄さ語りをします。
よく「時代の先をいく音楽」という言葉があります。
ただスティーヴィー・ワンダーはそういう類には感じません。
私は、
スティーヴィー・ワンダーが生んだ音楽は、スティーヴィー・ワンダーがいなければ生まれなかった音楽なんだ
と思っています。
彼の作曲する音は通常ではありません。
特に上記4作品で発表された曲から、類似した作品が浮かびません。
まるでポップでなく、どうしたらこれを曲として完成させられるのか、と思う進行をしています。
一方で、彼の歌唱も通常ではありません。
自分で作曲した異様な曲進行を、自分の歌唱でねじ伏せるようにしてポップで成り立たせているのです。
例えば、



Stevie Wonder - Don't You Worry 'Bout a Thing (Lyrics)


「Don't You Worry 'Bout a Thing」邦題「くよくよするなよ」。
何か素直じゃない曲ですよね。
それなのにセンスでポップソングとして成り立たせている。
この曲が無かったら洋楽は5・10年進歩が遅れていた、というのでは無い気がします。
スティーヴィー・ワンダーは誰も想像しない曲を書いたのです。
このアルバムに収録された9曲は、そのようなセンスで成り立っています。
「時代の先を行く音楽」は時代と共に追いつかれ、後に古びます。
しかし「インナーヴィジョンズ」は永遠に古びません。
私が無人島に流れ着き、50年経ってから救出されても、私はこの作品を愛し続けられるのです。

■好きな1曲

私は、アーティストが「とんでもない1作を作ってやるぞ」という意気込みを持って作った作品が好きです。
「インナーヴィジョンズ」の曲は、それぞれがヒリヒリと研ぎ澄まされています。
社会派な歌詞もさることながら、スティーヴィー・ワンダーの祈りや怒りが、曲に現れているのです。


私が最も好きな曲は、



Stevie Wonder - Jesus Children of America


「Jesus Children of America」邦題「神の子供たち」。
あんまりこの曲を一番好きという人は知らないです。
私はアルバムの中で、この曲が一番ヒリヒリしました。


最も偉大なアーティストの最も偉大な作品、間違いなく買いです。

インナーヴィジョンズ

インナーヴィジョンズ

The Strokes - The New Abnormal

The Strokes 7年ぶりの最新作

2020年4月10日にリリースされました。
The Strokes(以下、ストロークス)の新作です。
「The New Abnormal」
私はApple Musicで聴きました。
皆さんはお聴きになりましたかね。


The New Abnormal

The New Abnormal

  • 発売日: 2020/04/10
  • メディア: CD

■前置き(ストロークスについて)

ストロークスアメリカのバンドです。
2001年に「Is This It」という1stアルバムを出し、それをきっかけに2000年代バンドの代表格として活動しています。
1stでのストロークスは、60年代のロックやかつてガレージロックと言われた、武骨でバンド主義の強い過去のバンドスタイルを踏襲していました。
1stが出る前にRadioheadが「Kid A」という非ロックのダークで実験的なサウンドを打ち出しました。
そうしたロックが非常に難解でダークなものだった音楽業界に現れた新しくも懐かしいサウンドでした。
また彼ら自身がモデルのようないで立ちで、ファッション含めて人気があります。
1stアルバムと、2ndアルバムの「Room on Fire」を最高傑作に上げる人が多いです。
ただ、私の思う最高傑作は5thアルバムの「Comedown Machine」です。
当時、アルバム発売時に購入した事など、思い出補正も込みですが、全曲をすごくリピートして聴きました。
まずアルバムのバランスが最高に良い、そしてどの曲もメロディが活きている、特に2曲目「All the Time」4曲目「Welcome to Japan」6曲目「50/50」8曲目「Partners In Crime」10曲目「Happy Ending」が素晴らしい。
曲順的に1曲置きに、とんでもない名曲が来る最高の構成でした。
これ以上どこに行くこともできないロックの成れの果てを感じました。
もちろん良い意味です、彼らは過去の1st、2nd以上が生まれないという市場評価を覆して今作こそこれ以上ない、という印象の素晴らしいアルバムを放ったのです。


そして6thアルバムが今作となります。
なので私にとっては最高傑作が更新されるかもしれない可能性を秘めたアルバム、それが「The New Abnormal」なのです。
本記事では、アルバムを聴いた個人的感想を述べていこうと思います。


■各曲の感想

①The Adults Are Talking
前作「Comedown Machine」からの延長上であるように感じます。
私はストロークスは「小品的な曲」にこそ魅力があると思っています。
この曲はその魅力が十分にあります。


②Selfless
3分42秒の曲の中で、ラスト1分から非常にエモーショナルになります。
いつからかジュリアンはボーカルに裏声を乗せるようになりました。
この曲はそのボーカルとしての幅が活きています。


③Brooklyn Bridge to Chorus
硬派で格好良いロックソングです。
タイトなドラムパターン、サビでギターもリズムに相乗りする感じが、まさしくストロークス印のロックです。
シンセ音を聞くと3rd、4th当たりのスタイルも踏襲されています。


この曲に限らず、ストロークスの魅力は非常に不思議な所にあります。
一言でいえば、ストロークス以外がやると恐らく格好悪いんです。
このバンドが志向する音楽性は、なんだか大味・大仰な所な部分があります。
故にメロディが単純だったり、ギャグなんじゃないかっていうものも含まれていたりします。
しかし時折、ギターが凄く全年代が懐かしく感じるキュンとくる旋律を弾いたり、ボーカルの嘆きに心を持ってかれる事があります。
そしてそれこそが00年代以降のロックのスタイルなのではないかと、リスナーに感じさせる魔法があるのです。


バンド自体も完全に意識して演れている部分とそうでない部分がありそうで、故に各アルバムでリスナーとの距離感が微妙にズレたりする事もあります。
ストロークスは解散の危機を囁かれてから、そのバンドの危機的状況と音楽の擦れた感じの相性が非常に良くなっていると感じます。
その点も加味されて、私の中での最高傑作は「Comedown Machine」なのかもしれません。


④Bad Decision
①~③までは盛り上がりはあるものの、少しダークな印象。
こちらは歌詞はともかく曲調はギター中心にカラッとしています。
サビも分かりやすく、曲タイトルを連呼します。
前述したギターのキュンとくる旋律が十分に聴けます。
名曲です。


⑤Eternal Summer
う~ん、ダサ曲枠ですね(笑)
その上に長くてダラダラしています。
前作にも「One Way Trigger」という曲があります。
ジュリアンボーカルの裏声主張が強めになった時、ダサ曲枠が出来上がります。
この曲では一部で裏声でなくなりますが、メロディも非常にダサい。
個人的にはこの曲は「ダサ曲」→「ストロークス印ソング」への進化が出来ていないと感じています。
(私は「One Way Trigger」も同様の感想を持っています…)


⑥At the Door
非常にシンプル骨太な構成です。
ジュリアンの声だけでロックを表現してやる、という位の。
というか、これはジュリアンのソロ作ぽいです。
(ジュリアンはソロでもアルバムを出しています)
私の好みではありません、単純にメロディが弱いからです。
実験なり遊びなりってメロディが強固である程にやれる余地が生まれると思っています。
この曲は余地が少ないかな。


⑦Why Are Sunday's So Depressing
この曲は⑤⑥よりは好きです。
ただどうも、ボーカルのダルさが、聴く方にダルいだけに聞こえる臨界点といった感じです。
ながら聴きには適していますが…。


⑧Not the Same Anymore
ボーカルが幾分ソリッドな印象です。
メロディも幾分活きています。
演出も見事です、全体的に統制が取れています。


⑨Ode to the Mets
この曲が新しいストロークスの在り方な気がしました。
ラストにミドルテンポなロックな大曲を配置するのは、昔のバンドではよくありました。
例えばPrinceの「Purple Rain」、例えばOasisの「Morning Glory」などなど。
この曲はそんな役割を見事に果たしていると思います。
私は前述したようにストロークスの「小品的な曲」が好きです。
なので全曲がこの曲のようになる事は好ましくないですが、アルバムで1曲あると全体バランスが非常に良いと感じます。



■総評

あくまで個人的な感想です。
私は以前として5thアルバム「Comedown Machine」の方が好きです。
①~④までの流れは見事でしたが、⑤~⑧で勢いが失速したように思いました。
明らかに曲の質が落ちている上、このアルバムは1曲が長尺(これまでのストロークスと比較して)である事も流れを落としているように思います。
ただ、⑨ではそれを帳消しにするような良い曲が出てきました。
以上をもって、ストロークスの作品としては沢山聞き込める良作品には違いありません。
7thアルバムが出るなら是非またレビューさせて頂きたいと思います。
それにしても、フジロックは開催するんですかねぇ…。
ストロークスは今年のフジロックに参加予定です。


PRINCE - MUSICOLOGY

■PRINCE復活作

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プリンスは私の最も愛するアーティストです。
中学時代に好きになり、以降どっぷりとプリンス沼に浸かっています。
プリンスが亡くなった年は、同年のDボウイの死も併せて深く悲しみました。


私にとってプリンス初体験はベストアルバムでした。

ヴェリー・ベスト・オブ・プリンス

ヴェリー・ベスト・オブ・プリンス

  • アーティスト:プリンス
  • 発売日: 2001/09/27
  • メディア: CD

次に聴いたアルバムが、今回紹介する「ミュージコロジー」です。
当時の最新作でした。(2004年発表)

MUSICOLOGY

MUSICOLOGY

  • アーティスト:PRINCE
  • 発売日: 2019/02/19
  • メディア: CD


見出しに書かせて頂きましたが、本作はプリンスの復活作と捉えられています。
ちょうどプリンス再評価の流れが音楽業界にある時でした。
同年に「ロックの殿堂」を受賞した事が当時の状況を端的に表しています。


同年の受賞者にジョージ・ハリスンがいました。
ジョージ・ハリスンは既に亡くなっており、ロックの殿堂ではプリンスを含む豪華メンバーで追悼曲「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」を歌っています。
その場でプリンスが披露したギターが当時話題になりました。
(他の出演者と明らかに温度感の違う凄まじい演奏でした…)

Prince, Tom Petty, Steve Winwood, Jeff Lynne and others -- "While My Guitar Gently Weeps"


またグラミー賞の受賞式でのビヨンセとのパフォーマンスも2004年です。
「LET'S GO CRAZY」など往年のヒット曲を演奏しました。

004 Prince & Beyoncé Prince Medley


プリンスの現役感が、プリンスから遠ざかっていた人にも広く伝わりました。
もっとも、恐らく当時のプリンスファンからすると、

「殿下は昔から今まで何一つ変わってないよ!」

という気持ちだったのでは?


私が後追いでリリースアルバムを追っていくとそう思わざるを得ません。
前作「RAINBOW CHILDREN」(2001)は別種の傑作です。
しかし殆ど話題にならなかったと聞いています。
また、今作と並行してこそっとWeb配信された2作品
「THE CHOCOLATE INVASION」および
「THE SLAUGHTERHOUSE」。
こちらもかなり質が高い上に挑戦的な内容ながら、話題にならなかったと聞いています。
(この2作品、私は後追い故に聴く手段がありませんでした。プリンスが亡くなった後にApple Musicから配信された事で全貌を知りました)


今作は、大傑作「PURPLE RAIN」発表から20年後に出た作品です。


「PURPLE RAIN」からのおよそ10年間(「LOVE SYMBOL」の頃まで)、プリンスは音楽業界をほぼ自分の思うままに動いていました。
世界中が彼の動向を注目し、1作品ごとにプリンスやその音楽性に関わる価値観をアップデートさせていました。
膨大な楽曲を発表して、その上その全てがオリジナリティ溢れる作品であり、チャートアクションも容易く実現する。
その上、数多くのプリンスの息のかかったアーティストがチャートを賑わすオマケ付き。
後追いの私が思うに、90年代に小室哲哉プロデュース曲が日本のチャートを席捲していた状態、あれを世界レベルで成しえていたのです。


しかし、その後の10年間は深く沈む事になります。
要因は色々あります。
レコード会社との確執、その末に改名、結婚相手(マイテ)との掛け合いが他人の共感を得にくい領域であった、子供との死別、マイテとの離婚…。
ただ私は、それらの要因よりもプリンス自身の音楽性と時代が噛み合わなくなっていた事が問題な気がしています。
プリンスが示した音楽性と違う方向に時代が進みだした、例えばヒップホップの潮流です。
またマイケル・ジャクソンの記事でも書きましたが、80年代にはスター・アイコンが重宝されたのが、90年代以降はむしろ新規アーティストに揶揄される存在になってきた事もあります。
mame-mame.hatenadiary.com


そしてプリンス自身も90年代から新しいバンド体制で、ある形のファンク・ラップ系統を展開していく事になります。
先に述べた「THE CHOCOLATE INVASION」、「THE SLAUGHTERHOUSE」はその方向性での作品と言えます。


今回紹介する作品ミュージコロジーは、

プリンスがやりたい事でなく、自分がやらねばならない事に集中した作品

なのではないかと思っています。
そしてそれこそがプリンスが時代と再び調和し、「復活作」と呼ばれるに至った理由だと考えます。


プリンスは今作のタイトルを「音楽学」としました。
そしてタイトル曲の歌詞で様々なファンクの先人達の名前や曲を引用しました。
タイトル曲のラストでは自身の過去の曲すら引用します。
加えてこの曲のPVは、プリンスの少年時代ともとれるアフロの少年がレコードを買い、自分の活躍を夢見ながら自室でギターを弾く姿を映しています。
プリンスはこの作品から明確に「ファンクの継承者」としての立場を背負うようになったのです。

Prince - "Musicology" (Official Music Video)


このような傾向は、実は前々作の「RAVE UN 2 THE JOY FANTASTIC」の頃のライヴから現れています。
このライヴでは、ラリー・グラハムなどのファンクの先人をゲストに呼びつつ、ディアンジェロなどのプリンスフォロワーも呼んで一大ファンクパーティーを作っています。


今作が強調したのはバンドサウンドでもあります。
プリンスは当時、昨今のアーティストは実際に演奏した音の素晴らしさを知らない、打ち込みに慣れすぎている、とコメントしたそうです。
が、(特にドラムの)打ち込みに傾倒したのがプリンスだったのでは…とも思ったり(笑
とにかくプリンスは意識的にファンクの継承者としてこのアルバムを仕上げました。
「THE CHOCOLATE INVASION」、「THE SLAUGHTERHOUSE」はガス抜きのようなものです。
同タイミングにこれだけの曲を仕上げていた事もあり、ミュージコロジーの選曲には非常に意図を感じます。
結果としてプリンスの思惑は当たり、今作は久しぶりのUS最高3位ヒットを放ちます。
(※前作はヒット性が薄いため比べるものではないかもしれませんが、前作のチャート成績はUS109位、前々作はヒット性を狙ったのにも関わらずUS18位でした)
最高3位の成績は1991年発表の「DIAMONDS AND PEARLS」以来です。
プリンスは音楽性の点で時代の最先端を走る、という立場を譲る代わりに、正当な音楽・技術に裏打ちされた音楽を鳴らす、という立場で時代とマッチした訳です。

■曲順の妙

今作は各曲も素晴らしいですが、最も優れているのは曲の並びです。
この作品ではプリンスが80年代に備えていた「アルバム内のバランス感覚」が優れた形で表現されています。
1曲目の「MUSICOLOGY」でのタイトル宣言。
2曲目は「ILLUSION, COMA, PIMP & CIRCUMSTANCE」のそぎ落とされたファンクはアルバム目玉曲でないにせよアルバムの聴き心地を損なわず誘導するスルメ曲。
3曲目の「A MILLION DAYS」でのロックバラード、しかし長尺でないため次曲に疲れる事無く移行します。
4曲目の「LIFE 'O' THE PARTY」でプリンス流のそぎ落としたパーティーソング。1つのアルバムの山場です。
この1~4曲だけ見てもバランスが非常に良い。
またこのアルバムでは中央での目玉曲配置として他にも5曲目「CALL MY NAME」、6曲目「CINNAMON GIRL」、7曲目「WHAT DO U WANT ME 2 DO?」とそれぞれタイプの違う傑作が並びます。
後半もバランスを意識した選曲。
例えば先の7曲目から8曲目「THE MARRYING KIND」9曲目「IF EYE WAS THE MAN IN UR LIFE」まで、曲間が繋がるようなアレンジが入っています。
アルバム1枚聞きとおす事が全く苦痛にならない構成です。


疲れる、苦痛、などネガティブな言葉を使いました。
しかしこの作品より前の10年間は特に、プリンスのアルバムはファンでも疲れる作品が多いのです。
単純に曲数が多く、Segueなど意図の読みづらい曲間を挟む謎アナウンスがあったり…。
Segueも含めてプリンスがトータルアルバムを作ろうとしていた事は分かるのですが、あまり効果的に感じません。
80年代のとりわけ黄金作品と呼ばれるアルバム群はミュージコロジーと同等の展開性と曲数でした。
一時期の変化した要因は、明らかに「レコード→CD」の販売媒体の変化です。
レコードに比べて収録時間が延びた事で16~18曲近い曲を1枚に収められるようになりました。
プリンスは普段から多作家であるためその分の曲を作る事は造作もありません。
しかし聴く側の価値観は変わっておらず、そこにミスマッチが生じていたのです。

ミュージコロジーで中央目玉曲の配置としたのは、レコードのA/B面の意識もあるかもしれません。
この点でもプリンスは一度、視聴者との距離感を図りなおしたのです。

■その後の作品

プリンスは次作の「3121」で超久しぶりの全米1位を獲得します。
この作品も聞きやすさはピカイチでしょう。
その次「PLANET EARTH」も同様の勢いは持っています。


しかし、だんだんとまたやりたい事やるぞモードに入ってきていた気もします。
というのも通常のCD販売から新聞紙にCDをオマケ配布したり、もしくはまた配信販売など、マジョリティな視聴者層から距離を置くような売り方に主体をシフトしていったからです。
プリンスのメディア戦略が時代の先をいっていた、という意見もあります。
しかし私は、プリンスはあくまでその時やりたい事をやる人なのではないかと思っています。
一時期プリンスの演奏動画はYoutubeにアップされるとすぐさま削除される、という状況でした。削除はプリンス自身が依頼したものであり、Youtubeへのアップロード自体を快く思っていなかったように考えます。
これも含めて、プリンスがどこまでメディア戦略を考えていたかは評価すべきです。
それも含めてメディア戦略に先見性があると考えるのも1つではあります。
でも私は、Youtube動画で正規の動画すらアップされて無かった事は割と新規客を逃す要因にもなっていた気がするのです。


ただ、私がプリンスファンとして言わせて頂きたい事は1つ。

「殿下は昔から今まで何一つ変わってないよ!」

です。
ミュージコロジー以降の亡くなるまでの作品はすべて現役感が十分あります。
そして私はすべてが傑作クラスのアルバムであると思っています。


昨年、ミュージコロジー他3作品のBlue-spec CD2での再発売がされましたね。
21世紀のプリンス作品はもっともっと評価されて然るべきなんです。


ミュージコロジー、買いです。